共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

 
  
■『戦旗』1670号(12月5日)4-5面

  
 
沖縄・琉球弧で強行される戦争態勢づくり
 
反帝国際主義で反戦反基地闘争を
 
          
              島貫結太郎 



はじめに

 琉球弧の島々の防衛を名目にして毎年行われている陸自と米海兵隊による共同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン」が七月二八日から八月七日まで強行された。一七〇〇人が暮らす与那国島では一一〇人ものアメリカ兵が初めて展開したのだ。同じ頃、辺野古においては完成の展望のない新基地建設―大浦湾埋め立てのための杭打ちを強行し始め、米兵による相次ぐ性暴力事件が発覚し、日米両政府が隠蔽していたことが判明した。そして、一〇月から一一月には日米統合軍事演習「キーン・ソード」が強行され、琉球弧を「戦場」とする演習を強行したのだ。
 沖縄で起こっている事態を捉え抜き、喫緊の課題を明らかにし、沖縄解放闘争に決起していこう。


キーン・ソード弾劾 オスプレイ事故糾弾

 一〇月二三日から一一月一日まで、九州・琉球弧一帯を中心に日本全域で、自衛隊と米軍が合計四万五〇〇〇人もの兵力を動員して「キーン・ソード25」を強行した。
 日米同盟の強化を目的として構成され、隔年実施している「キーン・ソード」だが、今年は日本列島を丸ごと米軍と自衛隊の共同出撃拠点として活用し、台湾近辺や琉球弧一帯での中国との戦争を想定した過去最大規模の演習となった。また、オーストラリア軍やカナダ軍が「同志国」として参加し、規模を拡大させている。
 沖縄では自衛隊基地・施設一二カ所、米軍基地・施設一一カ所、民間空港三カ所、民間港湾五カ所、その他基地のない伊是名島や民間企業の施設、公道なども使用された。主な訓練としては、自衛隊那覇基地、同勝連基地、同宮古島基地で12式地対艦ミサイルによる対艦戦闘訓練、03式地対空ミサイルによる対空戦闘訓練が同時に行われ、同南与座基地と同久米島基地では03式地対空ミサイルによる対空戦闘訓練が行われた。米軍嘉手納基地では自衛隊南西高射群と米陸軍防空砲兵大隊の共同による防空訓練が行われた。
 自衛隊石垣島基地では、12式地対艦ミサイルによる対艦戦闘訓練、03式地対空ミサイルによる対空戦闘訓練に加えて、第三海兵遠征軍の高機動ロケット砲システム「HIMARS」(ハイマース)による対艦戦闘訓練も行われた。また、災害訓練で海自が同港の民間燃油施設を使用するとの連絡が全港湾沖縄地方本部にあったが、二八日に油槽船(YOTO1)を石垣港K岸壁に着岸させ、民間の燃料配管と接続できるか検証することであったことが明るみに出た。同組合は同日に抗議集会を予定していたが、「天候不良」を理由に海自の入港がキャンセルされた。だまし討ちでの港湾の軍事利用を阻止したのだ。
 与那国島では被災者、観光客等を島外へ避難させるべく沖縄島等へ輸送する訓練を初めて行った。最大の被害を受けることを想定したものだ。被災による重症患者のトリアージを行った後、島外病院へ搬送が必要な患者を自衛隊の救急車で搬送し、与那国空港から米軍のMV22オスプレイ及び自衛隊のV22オスプレイにより沖縄島等の病院へ輸送するという。しかし、事故により初めての陸自オスプレイ演習は中止となった。

オスプレイ撤去しろ

 陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイが一〇月二七日、陸自の与那国基地で離陸直後に機体が左右に揺れて姿勢が不安定になり、左翼の下部が地面と接触し、機体の一部が損傷した。事故を受けて陸自は全一七機のオスプレイの飛行を見合わせたが、同機種の米軍オスプレイは続行。オスプレイの防衛省の発表はこの事故が起きてから九時間後だった。衆院選の投票時間を終えてからであった。これこそ「大本営発表」だ。訓練にオスプレイを使うことを自粛するようにと申し入れていた玉城デニー知事は「欠陥機オスプレイの配備を撤回すべきだ」と語気を強めた。
 防衛省はこの事故を人的要因と発表して飛行再開をさせている。しかし、直前の二三日にも同訓練に参加している陸自の木更津基地所属オスプレイ一機が鹿屋航空基地に緊急着陸し、一一月一四日には、奄美空港に普天間基地所属のMV22オスプレイ一機が事前通告なしに緊急着陸している。昨年一一月に起きた屋久島沖での米空軍横田基地所属CV22オスプレイ墜落事故をはじめ、事故が頻発している。屋久島沖事故後には、全世界でオスプレイを飛行停止したが、変速機の故障として交換・修理することで飛行再開させた。しかし、変速機がなぜ故障したのかは明らかにされてはいない。安全より飛行再開を優先させている。
 米空軍仕様のCV22オスプレイの重大事故「クラスA」の事故率(一〇万飛行時間当たりの事故件数)が8・03であることが公表されている(米空軍安全センターの統計)。海兵隊と海軍を合わせたオスプレイ全体の事故率の平均4・1を大きく上回っている。過去一〇年間の事故率でも、空軍の全保有機の中で最も高いという。
 琉球弧の他の地域、奄美、徳之島、沖永良部島、喜界島でも実施された。特に基地のない徳之島では、昨年「特定利用空港・港湾」に指定された徳之島空港をはじめ、島丸ごとと言っていいほど港や公園や山地など、三四もの施設・場所が訓練に使用されたのだ。
 まさに琉球弧が戦場になった場合を想定した内容で、住んでいようがいまいがところかまわず利用することで「戦時の利用方法」を試し、「戦場」をよりリアルに捉えようとしているのだ。「日米共同作戦計画」の実戦訓練であり、「台湾有事」の初動段階で琉球弧約四〇の有人島に臨時の攻撃拠点を置き、地対艦・地対空ミサイルなどで中国を攻撃する計画であることを、国内外に見せつけた。
 この演習の最中の一〇月二八日には、海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が初めて参加して、米、豪、ニュージーランド、比各軍の艦艇と台湾海峡を通過する共同訓練も行っている。「特定の国を意識した訓練ではないが、南シナ海(ママ)での力による現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為にも強く反対する」(防衛省)などと喧伝しているが、中国は反発し、緊張を高める結果となっている。そもそも日米それぞれが「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場を認める」ことを記した中国との共同声明などからすると、台湾海峡は領海となり、その通過訓練は領海侵犯となる。
 本格的に戦場にみたて戦争挑発する軍事演習に対して、抗議行動が沖縄―「本土」各地で巻き起こった。
 沖縄島では一〇月一九日、中城湾港西埠第四ゲートで緊急行動実行委員会約一四〇人が結集し抗議の声を上げた。全港湾沖縄地方本部は同月二八日、那覇新港ふ頭で抗議集会を開き、港湾労働者約五〇〇人が集まり「港を軍事利用させない」と抗議。奄美、宮古、石垣、与那国など各島々の住民も抗議の訴えと申し入れなどを行っている。そして、一一月七日にも「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」の呼びかけで沖縄防衛局前に約五〇名が結集して、日米統合演習中止などを求め気勢を上げ申し入れを行っている。
 奄美では「奄美の自然と平和を守る郡民会議」が奄美基地前で抗議し、訓練の中止を求める要請書を手渡した。
 「本土」においても、一〇月三〇日には宮崎で海上自衛隊の哨戒機一機が着陸した宮崎空港前で抗議。長崎では航空自衛隊の戦闘機四機が長崎空港に着陸したことに抗議。岩国では岩国市へ市民団体が申し入れを行った。厚木基地に対しては第五次厚木基地爆音訴訟団らが抗議申し入れをした。一〇月二二日には「キーン・ソード」やめろ!10・22官邸前行動があり、一一月七日には沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの呼びかけで与那国オスプレイ事故と戦場化を許さないと防衛省に抗議を行った。ミサイル配備をはじめとした基地強化に反対する琉球弧、西日本で演習中止を求める共同声明を発し連携する行動も始まっている。


辺野古新基地くい打ち―埋め立て強行

 日米同盟の強化によって、自ら止めることのできない辺野古新基地建設の暴挙は泥沼へと踏み込んでいる。
 昨年一二月二八日に国交大臣斎藤鉄夫(当時)が設計変更を代執行し、今年一月一〇日に防衛省・沖縄防衛局は沖縄「県」の行政指導を無視し海上ヤードに石材投入をして工事に着手した。そして埋め立て承認の条件である「実施設計・環境保全対策の事前協議」ですら一方的に打ち切って、八月二〇日に護岸工事のくい打ちを強行した。
 しかし、強行している海上ヤードの設置のための石材投入、護岸工事のための鋼管杭打ちが始まると、すぐさま海が白濁し、汚染された。影響がないとしたサンゴが土砂におおわれたりするなど、生物に多大な影響を及ぼしていることは容易に推し量れる。
 このように強引に押し進める工事は、ついに死傷事故を引き起こした。六月二八日、安和桟橋から土砂を海上搬出するために土砂を運ぶダンプに轢かれて警備員が亡くなり、抗議行動を行っていた人が重傷を負ったのだ。すでに四カ月以上経っているが、警察は事故原因などを明らかにしていない。にもかかわらず、沖縄防衛局は八月二二日に工事再開を強行した。それも警備員を倍増し機動隊も動員して、長い網で歩道の通行を長時間さえぎっての違法で不当なやり方だ。また、沖縄防衛局は抗議行動を「妨害行為」と喧伝しだし、「県」議会でも野党自民党らが玉城知事への攻撃として利用しているのだ。ダンプ運転手も証言しているように、沖縄防衛局が工事を急がせたことが原因だ。にもかかわらず玉城「県」政に責任を押しつけ抗議行動をさせないようにしているのだ。徹底して真相究明しよう。
 まさしく展望のない辺野古新基地建設の工事をなりふり構わず続けてきたことの結果だ。工事の問題点を問いただすことなく沖縄「県」の権限を奪う「代執行」という強権発動は、地方自治法を改悪してさらに強化された。法定受託事務だけでなく自治事務にも国が関与することで、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の発生や恐れがある場合、閣議決定すれば担当閣僚が国民の生命や財産を的確・迅速に保護するための措置を自治体に指示できることにしたのだ。改憲案の「緊急事態事項」の先取りであり、地方自治を破壊して国家権力に抗えないようにする戦争態勢づくりだ。
 工事を進めている印象をもたせることで沖縄人民にあきらめ感をうえつけることに終始しており、辺野古新基地容認―「沖縄・琉球弧の戦場化」に先導役を務める「県」政への転換を目論んでいる。
 そういう意味でも辺野古新基地建設阻止闘争は、沖縄解放闘争の重要な環としてあり続けている。沖縄の歴史的体験から新たな軍事基地を造らせないことを結節点に島ぐるみの闘いとして創出された、七二年沖縄反革命的統合以降、歴史を画する闘いである。さらに「本土」各地からの結集で全国闘争へと結実化させた。この地平こそが「沖縄・琉球弧の戦場化」を粉砕するのだ。その基軸たる現地座り込みに結集し、沖縄―「本土」貫く闘いを強化しよう。


米兵による相次ぐ性暴力糾弾

 日米同盟の強化、戦争態勢づくりは、相次ぐ在日米軍兵士による性暴力と日米両政府の隠蔽としても露わになっている。
 昨年一二月に起きた米兵による性暴力事件が、六月二五日の報道で初めて公表された。事件から半年、外務省は三月二七日の起訴を把握しながら日米合同委員会合意(九七年)である「起訴事案については全ての事案について情報伝達」さえもせずに約三カ月、沖縄「県」に伝えていなかったことが発覚した。この隠蔽を追及し始めると、さらに四件の性暴力事件が昨年一月から今年五月末までに起こっていたことが判明したのだ。
 一二月の性暴力事件を隠蔽していなかったら、それ以降の性暴力事件は防げたのではないかと怒りは倍増している。隠蔽された間には、辺野古新基地設計変更承認の「代執行」、五月県議選、6・23「沖縄全戦没者追悼式」への岸田首相・上川外相(いずれも当時)の参列があった。このときに明らかとなっていたら、九五年米兵による女子小学生への性暴力事件に抗議して八五〇〇〇名が結集した県民総決起大会のように、爆発した怒りが辺野古新基地建設、「県」議選、岸田・上川へと向かうことを恐れ、隠蔽へと働いたのだ。
 政府は隠蔽の理由を「被害者の保護、プライバシー」だと繰り返す。しかし、裁判では被害者が一畳ほどの空間に閉じ込められ、遮へい措置が取られた証言台で長時間の尋問を続けるというセカンドレイプにさらされたことに、抗議の声があがったのだ。しかも、九月一三日の省庁交渉(主催:基地・軍隊はいらない4・29集会実行委員会)で政府関係省庁のどこも被害者のケアをまったく行っていないことも判明した。「守るのは被害者ではなく米軍」であることが暴露されたのだ。米軍もこれまでの事件ではトップが謝罪のポーズをとってきたが、今回は謝罪の一言もない。沖縄・琉球弧を戦場へと化していく日米同盟の姿だ。
 今から八年前、二〇一六年に米軍属による女性殺害事件が起こり、その一カ月前にも米兵による性暴力事件があったことに対応して、政府が「沖縄・地域安全パトロール隊」を新たに創設したことは記憶に新しい。しかし、その一カ月後にはパトロール隊に派遣された防衛局職員全員が高江ヘリパッド建設の抗議行動への警備に動員されていたのだ。業務としても年間九億円近く費やし、四年間(二〇一六年六月から二〇二〇年二月末)で八件の警察通報であった。実態はポーズでしかない。
 七月一〇日には沖縄「県」議会で政府関係省庁宛の「相次ぐ米軍構成員等による女性への性的暴行事件に関する抗議決議」と同意見書を全会一致で採択した。意見書では、「沖縄県民はこれまで在沖米軍構成員等による事件・事故にさいなまれ、そのたびに重くのしかかる米軍基地負担の重圧に苦しんできた歴史を抱えている」「捜査当局及び外務省からの情報提供がなかったことで、県民からの疑念を持たれている」として、「1.被害者への謝罪及び完全な補償を行うこと。2.被害者への丁寧な精神的ケアを行うとともに、セカンドレイプ(性的二次被害)の防止を徹底すること。3.米軍構成員等による犯罪事案については、今後、被害者のプライバシーを守ることを第一としつつ、沖縄県及び関係市町村への迅速な通報ができるよう、日米合同委員会を通じ、米側との調整を行い、断固たる措置をとること。4.米軍構成員等を特権的に扱う日米地位協定の抜本的改定を行うこと。特に身柄引き渡し条項を早急に改定すること」を要請している。これらの要請を実行させなくてはならない。沖縄人民に連帯し、沖縄―「本土」つらぬき米兵による性暴力事件糾弾、日米地位協定の抜本的改定、軍事基地撤去を実現させていこう。


反帝国際主義で戦争態勢を粉砕

 「沖縄・琉球弧の戦場化」―日本列島の戦争態勢づくりとの総対決が、まさしく反戦闘争として決定的な局面を迎えている。沖縄人民が日米両帝国主義の権益のために戦争動員され、住民と軍隊が混在する中で死傷し多大な被害を受けると同時に、台湾、中国の人民への出撃として加害していく。日帝の鉾先として再び沖縄戦のような事態が生み出されるのだ。
 沖縄戦を経験した沖縄人民の総決起と「本土」の人民との結合を生み出していくことこそが重要である。その要が反帝国際主義である。中国・台湾をはじめとした東アジアの人民との結合こそが、中国敵視―「台湾有事」の日米両帝国主義の排外主義煽動を粉砕して、帝国主義戦争を阻止するのだ。「第二次世界大戦」アジア侵略―帝国主義戦争を繰り返さない闘いとして推し進めることが課題だ。とくにアジアに対して日本帝国主義の人民として動員され侵略戦争に加担した上に、沖縄に対しても差別抑圧してきた「本土」の人民にこそ問われている。
 辺野古新基地建設阻止、「沖縄・琉球弧の戦場化」粉砕! 性暴力事件糾弾、日米地位協定の抜本的改定を実現させよう! 反帝国際主義で沖縄差別軍事支配を打ち破ろう! 安保粉砕―沖縄解放へ突き進もう!

 


Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.